2013年4月24日水曜日

<心の探求シリーズ13>生涯発達心理学の授業を受けて


安心感の問題

人は幼少期にどのように愛されたか、どのように育てられたかということが、その後の人格形成に大きな影響を与えます。もし愛が十分でなくても、その後に幼少期にできた心の傷(抑圧)は癒せます。

今回のAさんの体験は、そのことを教えてくれているように思います。

 
Aさんからの投稿)

生涯発達心理学の授業の中で、自分の過去を振り返ってみる中で、特に乳児期における「基本的信頼」そして「安心感の獲得」というところが、自分は十分にできていなかったのではないか、と感じました。

 
今までの授業の中でも感じていたことですが、自分の中に何か原因がわからない「不安」を持っており、自己主張するのが怖いといったように、周りに対してつねにビクビクし、小さい頃から消極的な性格でした。

そこで、この授業の中で、乳児期に、特に母親との関係の中において何か問題があったのではないかと思いました。

 
私の母親はごく普通の親で、私は虐待を受けたわけでもありません。ごくごく普通に親からの愛情を受けて育てられてきたという感覚でいました。

ただ私は、生まれた後、母乳も受け付けず、栄養失調手前までの状態になったので、仕方なく、腕の皮を引っ張って、そこから注射を打つなどの治療を施し、なんとか生きながらえることができたそうです。

そのことを授業で伝えたとき、自分が生まれたときのをかくように勧められました。

自分の中に浮かんできたイメージは、自分の周りを人が囲うようにして立っており、非常に心配そうに見ている感じのものでした。その絵を描いているときに、思わず泣きたくなるほどの「悲しみ」の感情がわき起こってきました。なぜ悲しくなるのかは、わかりませんでした。

 
その後、母親とのロール・レタリングを行いました。

描いた絵を見ながら、その中の母親に意識を集中してみると、「心配」というよりは、「不満」、「くやしさ」といった感情が伝わってきました。

なぜ、そのような感情が伝わってくるのかわかりませんでしたが、続けてロール・レタリングを行いました。

以下、母とのやりとりです。

 
(母) くやしい・・。なんでこんな子を産んだの?もっとかわいく生まれてくるはずだったのに。

※私が生まれてすぐの状況は、顔がアザだらけで、見た目がまるで猿のような感じだったようです。一人として、「かわいい」という人はいなかったようです。さらに死にそうなほどやせ細っていて母乳も受け付けず、昔なら間違いなく死んでいたそうです。母親からは、産んだ子の心配もありましたが、それよりも、自分がこんな子を産んだことで自分が欠陥品のようにみられることへの「不満」と「くやしさ」を感じました。

(私) 期待に応えられなくて、申し訳ありません。でも、自分ではどうすることもできません。本当にごめんなさい。

(母) くやしい・・。私は周りに認めてもらいたいの。結婚して以来、(夫の母に)さんざんいやみを言われて、いじめられてきたの。ここで見返してやりたかったのに・・。

(私) 私のことを愛していないんですか? 私はあなたに必要とされていないんですか?

(母) そんなことはない。お腹を痛めて産んだ子がかわいくないはずはない。

でも、私も、この家の中でうまくいきたかった。あなたをきっかけとして、家の中がうまくいって、私の立場も良くなれば、それにこしたことはないのに・・。

(私) でも私は一生懸命がんばって生まれてきました。今はこんな状況でも、将来必ずあなたを助ける存在になります。どうか今この状態にとらわれず、長い目で見てください。

(母) わかりました。でも、私もすごくつらい立場にあるの。この人(私の父)と結婚して家に入ったことを、ものすごく後悔しているの。あなたがその希望だったの。なのに、なんでこんなふうに生まれてきたの?とってもくやしい。自分の立場がない。どうしてくれるの?

(私) あなたにとって、わたしは何ですか?単なるあなたの立場を守るために道具にすぎないのですか?それなら、私はあなたから生まれてきたことを後悔します。でもそう思うことは、私にとってはとても悲しいことです。

(母) そんなことを言っても、私には私の立場があるの。でも、道具なんて思っていない。

(私) 私はあなたから産まれてとても良かったと思っています。あなたから、これからいろいろなことを学んでいくでしょう。今はつらくとも、これからあなたの支えになっていきます。ですから、どうか私を受け入れてください。

(母) わかりました。

(私) 私の父親についてはどうですか。

(母) 親の味方ばかりして、私にはかまってくれない。仕事ばっかりで、私のことを見てくれない。あなたが生まれれば、少しはこっちに向いてくれると思うの。そういう意味でもあなたはとても大切な存在なの。

(私) とても大切な「道具」ということですか?

(母) そうではないけど。

(私) 私はあなたを責めるつもりはありません。私を産んでくださったことをとても感謝しています。これからもその思いを強くしていきたいと思います。その中で、あなたからの愛を深く感じていきたいと思います。

 
ここで終了しました。

ロール・レタリングをして、まさかこのような思惑の中で私が産まれてきたとは思ってもいませんでした。

しかしながら、母には母の立場があったと思います。嫁姑の確執の中でいろいろと心を痛めながら、自分なりにがんばってきた母の思いが伝わってきました。ですから、決して母を責めずに、しっかりと「受容」して理解してあげることが大切だと思いました。

 
生まれた時の自分が感じた思いも伝わってきました。まわりが心配しているなか、自分もどうしていいかわからず困惑している思い、母の期待に応えられなくて、また受け入れてもらえないことの悲しみ、それが絵を描いているときに感じた「悲しみ」として自分に伝わってきたと思います。

 
(コメント)

 
ロール・レタリングというのは不思議なものです。
 
これが本当に死んだお母さんとの対話かどうかは、実は検証はできません。
 
しかし、Aさんがそれを通して発見があり、心の成長につながるならば、

 それは真実の対話であったと思っていいのではないかと思います。

 キュブラー・ロスという高名な心理学者は、死者と対話したいなら

 死者との手紙のやり取りをすればいいと勧めています。

 もちろん死者からの手紙も生きている人が書くので、

 ロール・レタリングの手法と同じです。
 
うまくいった場合、それは大きな癒しをもたらすものです。
 
Aさんからは、数日後に次のようなメールをいただきました。

 
Aさんからのメール)

「さて、乳児期についての件ですが、この時をきっかけとして、自分を受け入れてくれなかったことに対しての影響が、現在まで大きく関わってきていることがわかりました。だから、よけいに人の愛を求める自分があるのかもしれません。

生まれた時点での「満たされなかった思い」が現在まで影響しているというのも、すごいものです。ですから、この部分を満たしてあげれば、かなりの部分が修正できると感じています。過去の自分の感情をはき出すことで、傷が癒されるということを授業の中で学びましたので、現在、その作業をしています。」

 

0 件のコメント:

コメントを投稿